『アフガン・緑の大地計画』
伝統に学ぶ灌漑工法と甦る農業

A5判上製229頁
978-4-88344-271-3
税込価格2530円
2017/06/10発行

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紹介

 

安定灌漑は、偉大な「投資」である

戦乱の続くなか、
旱魃と洪水で荒廃に瀕した農地と沙漠が
伝統工法で甦る。

 

技術と魂の記録

 

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「PMSによる地域重視型事業は、安定した灌漑用水利用という技術的成果を基礎として、農家収入の増加という経済的成果をあげ、地域社会の能力を向上させて水資源・灌漑施設に係る主体者意識(オーナーシップ)が高まるという社会的成果を達成した。
 PMSによる事業後のJICA(2015)によるアンケート調査によれば、調査対象者の87%は水路掃除や営農において互いに助け合っており、86%は政府と地元住民との関係や協働が促進されたと感じ、93%は地域住民間の関係が良くなったとし、84%は治安が良くなったと答えている。また、避難民であった人の避難年数は、20年以上が42%、11年から15年が36%であり、長期にわたる避難民が帰村していることがわかる。このように、PMSによる事業は地域社会に様々な大きなプラスの影響を与えている」
(永田謙二 本書収載論文「アフガニスタンにおける水資源・灌漑政策」より)

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ペシャワール会HPより『アフガン・緑の大地計画』改訂版が購入可能です。
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目次

 はじめに

総論――アフガン東部の干ばつと対策
  PMSが取水方式にこだわるわけ
    日本とアフガニスタン――河川と灌漑の類似性
  干ばつの発生機序
    温暖化と雪線上昇/高気温と貯水・保水力の低下
  中小河川沿い地域の問題と対策
    雪線の上昇と乾燥化/山麓地帯と山間部の高地/貯
    水池の効用と可能性
  大河川沿いの問題とPMS取水方式
    従来式が追いつかぬ気候変動/手を加えて却って悪
    化する場合が多い/川際で取水量を調整/取水量の
    調節と土砂流入を防ぐ工夫/アフガニスタンに適し
    た技術――斜め堰/体系的な取水システムの提唱/
    完成度を増した取水堰
  最も経済的な「投資」
  ――干ばつと難民、干ばつと治安
    「耕せない農民」の現実、水がもたらす安定と恵み/
    戦争と援助で食をしのげるか/アフガン農村の自治
    性と国家管理/安定灌漑――偉大な「投資」/他人事
    でない自然との関わり
  クナール河流域の気候条件と干ばつ
    河の水位変化/気温・水温の変化/沙漠化と洪水被害
  「緑の大地計画」における安定灌漑

技術編――「適正技術の試み」

Ⅰ 基礎的な技術(資材の工夫)
  1 蛇籠(ふとん籠)工
    構造と機能
    ① 用水路内壁の蛇籠(ふとん籠)工
    ② 河川工事
    ③ 交通路の法面保護
     不利と思われる点、勧められぬ例
  2 植生工(柳枝工など)
    柳枝工/「剣山」・粗朶柵工/他の植生工
  3 石積み工
  4 ソイルセメント(アフガンの土とセメント混合物)工

Ⅱ 治水・灌漑に挑む(主な構造物への応用)
  1 洪水対策工(最低限の治水技術)
    ① 石出し水制
    ② 巨礫による根固め工の連続堤防
  2 取水設備(PMS方式の頭首工)
    ① 巨礫による斜め堰
    ② 二重堰板式の取水門
    ③ 取水、「急傾斜」水路と沈砂池
      土砂排出(自動浚渫)のしくみ/沈砂池(調節池)
      までの主幹水路/沈砂池・送水門・排水門
  3 主要水路(沈砂池以後)の構造
  4 緩衝池(貯水池)
  5 排水路
  6 防砂林
  付1 石材輸送について
  付2 揚水水車
  付3 「緑の大地計画」の灌漑面積概要
  付4 マルワリード用水路の概要(2009年開通時)

山田堰と「緑の大地計画」――温故知新
  安定水量の確保/技術体系の結晶「斜め堰」
/人力で作られ、人力で維持

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アフガニスタンにおける水資源・灌漑政策
  地域社会のオーナーシップが復興への鍵となる

                 永田謙二

  1 本研究の背景と目的
  2 アフガニスタンにおける水資源・灌漑セクター
  3 アフガニスタンの地域社会構造
  4 地域重視型事業と政府・ドナー主導事業との比較分析
  5 復興と再建に寄与する持続可能な水資源・灌漑政策
    ―地域社会のオーナーシップの確立に向けての3つの提言―
  6 地域重視型事業の持続可能な広域展開に向けて
  7 結論と議論

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 あとがき

著者

中村哲

なかむら・てつ

 1946年福岡県生まれ。九州大学医学部卒業。医師。国内の病院勤務を経て、1984年パキスタン北西辺境州(現パクトゥンクワ州)の州都ペシャワールに赴任。以来ハンセン病を中心とした貧民層の診療に携わる。1986年からはアフガン難民のための医療事業を開始、アフガン東部山岳地帯に三つの診療所を設立。98年には基地病院PMSをペシャワールに建設。2000年以降は、アフガニスタンを襲った大干ばつ対策のための水源確保事業を実践。さらに02年春からアフガン東部山村での長期的復興計画「アフガン・緑の大地計画」を開始、03年3月からは灌漑水利計画に着手、07年4月第1期工事完成。2019年現在、灌漑面積約1万6千5百ヘクタール。年間診療数約8万人(2006年度)。
 著書に、『ペシャワールにて』『ダラエ・ヌールへの道』『医は国境を越えて』『医者 井戸を掘る』『辺境で診る 辺境から見る』 『医者、用水路を拓く』(以上石風社)、『アフガニスタンの診療所から』(ちくま文庫)、『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る――アフガンとの約束』(澤地久枝氏との対談 岩波書店)、『天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い』(NHK出版)、などがある。
 ペシャワール会現地代表、PMS(平和医療団・日本)総院長として現地事業を指揮。2019年12月4日、アフガニスタン・ジャララバードで、凶弾に斃れる。享年73歳。

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